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広島地方裁判所 昭和23年(行)24号 判決 1948年6月01日

廣島縣安藝郡江田島村一万七千五百四十四番地

原告

久岡重治

右訴訟代理人弁護士

廣島市霞町廣島縣廳内

被告

廣島縣農地委員会

右代表者会長

楠瀨常猪

右當事者間の昭和二十三年(行)第二四号農地委員会の裁決取消請求事件について当裁判所は次の通り判決する。

主文

原告の訴は之を却下する。

訴訟費用は原告の負担とする。

事実及び理由

原告訴訟代理人は被告が昭和二十二年九月二十九日「昭和二十二年八月十九日江田島村農地委員会のなした原告の異議申立に対する決定は之を取消すべきでない」旨の裁決を取消す、訴訟費用は被告の負担とするとの判決を求めた。其の請求の原因とするところは、別紙目録記載の不動産は久枝武之助の所有であつたが原告が昭和二十年四月十五日同人から代金二千六百九十四円で買受け当時其の引渡を受けた。然るに江田島村農地委員会は昭和二十二年八月右不動産を久枝武之助の所有と認め、同人は鎌倉市に居住するので右不動産は自作農創設特別措置法第三條第一項第一号に該当する土地であるとして買收計画を樹てたので、原告は之に対して異議の申立をしたが、同委員会は異議申立却下の決定をした。原告は更に被告に対し訴願の申立をしたが、被告は原告が右不動産の所有権取得登記手続をしていないから、江田島村農地委員会が原告の所有権を認めないで、久枝武之助所有の土地として買收計画を樹てたのは違法ではないとして右農地委員会が原告の異議申立を却下した決定は取消すべきではないとしその裁決書謄本は昭和二十二年十二月三日頃原告に送逹された。然し、民法百七十七條の不動産に関する物権の得喪及び變更は其の登記をなすのでなければ第三者に対抗することが出來ない旨の規定は物権に関する私法的取引の安全を確保するためのものであるから、自作農創設特別措置法に依る買收の如き行政権の作用による強制收用の如きものには適用がないのであつて、原告は登記の欠缺に拘らず、江田島村農地委員会及び被告に対して不動産の所有権を主張することが出來るのであるから被告のなした右裁決は違法である、仍て其の取消を求めると謂うに在る。

職権で本訴の適否を考えてみると自作農創設特別措置法の一部を改正する法律の附則第七條に依ると右改正前の自作農創設特別措置法による行政廳の処分で違法なものの取消又は変更を求める訴は右改正法の施行前にその処分のあつたことを知つたものは右改正法施行の日である昭和二十二年十二月二十六日から一ケ月以内に之を提起することが出來る旨規定してあるので右出訴期間を徒過した訴は不適法として却下すべきであり、行政廳の処分の取消又は変更を求める訴については当該行政処分のあつたことを知つた時から出訴期間は進行するものと解すべきであり、一連の手続を経て最終的な効果を目的とする行政処分がなされる場合と雖も、其の前提たる行政処分に付ては別異に解することは出來ない。從つて本件で未だ買收令書の交付がないとしても被告がした本件裁決に対する不服の訴の出訴期間はその裁決のあつたことを知つた日から起算すべきである。

原告が被告のした裁決を知つたのは昭和二十二年十一月二十六日以前であることは原告の自認するところであるから原告は右改正法施行後一ケ月以内である昭和二十二年一月二十六日(二十五日は休日)までに本件の訴を提起すべきであるのに本件の訴状が当裁判所に提起されたのは昭和二十三年五月七日であることは本件記録に徴し明らかであるから、本訴は出訴期間経過後の提起にかかるもので不適法であつて欠缺を補正することが出來ないから之を却下する。

仍て訴訟費用の負担につき民事訴訟法第八十九條を適用して主文の通り判決する。

(目録省略)

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